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日外会誌. 88(2): 191-198, 1987


原著

ビリルビンカルシウム胆石の成因に関する臨床的,実験的研究

東京医科歯科大学 医学部第2外科学教室(主任:三島好雄教授)

金井 昌敦

(昭和61年1月23日受付)

I.内容要旨
胆嚢結石,総胆管結石,肝内結石の各症例について,手術時に胆汁を採取し,1)細菌培養,2)β-glucuronidase活性の測定,ならびに3)高速液体クロマトグラフィーを用いてビリルビン分画の解析を行なつた.胆石の種類別すなわちコレステロ一ル石とビリルビンカルシウム石との間で1)~3)の結果について比較検討を行なつた.4)次に実験的研究として,正常無菌胆汁に各種の細菌を添加し,ビリルビン分画に及ぼす影響について検討した.その結果,1)胆汁中細菌検出率はコレステロール石が42.3%であるのに対して,ビリルビンカルシウム石では72.0%と高率を示した.2)β-glucuronidase活性値(U/dl,hr)はコレステロール石胆汁が3,338±2,615(mean±S.D.)であるのに対して,ビリルビンカルシウム石では7,013±5,113と有意に高値を示した.3)胆汁中総ビリルビンのうち,遊離ビリルビン(IXα)の比率はコレステロール石では2.6±2.0%(mean±S.D.),ビリルビンカルシウム石では5.7±4.7%と後者で有意に高値を示した.4)無菌胆汁にE.coliを添加すると遊離ピリルビン(IXα)が著明に増加したが,他の菌ではその様な変化は認められなかつた.以上,ビリルビンカルシウム石形成の一面を明らかにし,細菌性β-glucuronidaseの作用により胆汁中遊離ビリルビンが増加し,Ca2+と結合してビリルビンカルシウム石の生成をもたらすという従来からの仮説について,高速液体クロマトグラフィーを用いた分析法によりこれを支持する結果をえた.

キーワード
胆石症, ビリルビンカルシウム石, β-glucuronidase 活性, 高速液体クロマトグラフィー, 遊離ビリルビン(IXα).

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