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日外会誌. 88(2): 163-175, 1987


原著

開心術における腎機能の研究
―特に術後心機能との関連について―

千葉大学 医学部第1外科(主任:奥井勝二教授)

北川 学代

(昭和61年2月6日受付)

I.内容要旨
開心術後急性腎不全は今なお予後不良な合併症である.術後心機能が体外循環による腎虚血改善に及ぼす影響について,また心機能低下症例における術後管理上有用な腎機能検査について,A群:心機能良好群(術後心係数2.2l/min/m2以下が1回以下の症例,27例),B群:心機能低下群(術後心係数2.2l/min/m2以下を2回以上示した症例,27例)の2群に分けて検討した.
尿量及びFENaにはA・B両群間で有意差を認めなかつた.クレアチニンクリアランスは術直後から,自由水クリアランスは術後4時間から,血清クレアチニンは術後1日から,また血中尿素窒素は術後2日からA・B両群間で有意差を認め,A群が良好な値を示した.血清Na,血清K,尿中Na:K比はA・B両群間で明らかな差は認めなかつた.
血漿レニン活性はA・B両群間で有意差は認めなかつたが,血漿アルドステロンは術後においてB群が有意な高値を示した.
心機能低下群における術後血漿アルドステロンの増加は,水・電解質バランスを崩す可能性があり,これら症例には抗アルドステロン剤が有用と考えられた.
B群において非乏尿性急性腎不全を4症例に認め,うち3症例を失つた.これらの症例は心拍出量低下に基づくMOFの状態であつた.
術後心機能低下群では心機能良好群に対し,術後早期からクレアチニンクリアランス,自由水クリアランスにおいて有意な腎機能低下を認め,その回復も遅れた.術後腎機能経過観察には,これらのパラメーターが有用と考えられた.
術後の腎機能の改善に関しては循環動態の早期改善及び安定化が最も重要であると考えられた.

キーワード
開心術後急性腎不全, 心係数, クレアチニンクリアランス, 自由水クリアランス, 血漿アルドステロン

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