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日外会誌. 88(1): 102-108, 1987


原著

血中カルシトニン値を指標とした甲状腺髄様癌の予後と外科的療法の効果の解析

1) 香川医科大学 第2外科
2) 隈病院 
3) 大阪大学 医学部第2外科

宮内 昭1) , 松塚 文夫2) , 隈 寛二2) , 高井 新一朗3) , 前田 昌純1)

(昭和61年4月18日受付)

I.内容要旨
甲状腺髄様癌の極めて鋭敏な腫瘍マーカーである血中カルシトニン値を指標として,本腫瘍の生物学的特徴,予後および外科的療法の効果について腫瘍の時間学的観点から解析を行なつた.本症患者67例を対象とし,術前・術後のカルシトニン値(それぞれS1,S2),摘出腫瘍重量(W1)より腫瘍遺残率(R),推定腫瘍遺残量(W2)を求め,S2が高値である症例ではカルシトニン値の倍加時間(T2)を求めた.R=(1/2)α(αを減量指数と呼ぶ)とすると,αT2はその手術による延命期間を示している.
これを期待延命期間と呼ぶ,さらに,遺残腫瘍量W2が通常腫瘍のため死に至る1,000gに達するのに要する倍加回数をβ(1,000/W2=2β,βを余命指数と呼ぶ)とすると,術後の期待生存期間はβT2で求められる.これらの諸因子と3年以内の死亡率,5年以内の再発率との関係をみると,術前カルシトニン値より術後カルシトニン値,これらより減量指数およびカルシトニン倍加時間の方が関連性が強く,最も関連性が強いのは期待延命期間であつた.期待生存期間が,0.8年,1.4年,3.9年と短い3症例はいずれもこれに近似した期間で死亡し,この値が大きいその他の症例は全て再発なく生存中である.腫瘍マーカー倍加時間は腫瘍の増殖の速さを,減量指数は手術の根治度を,そして期待延命期間は手術の予後に及ぼす効果をそれぞれ数量的に示したものであり,これらの概念および余命指数,期待生存期間の概念を新たに設定することによつて,個々の手術の効果を数量的に評価し,個々の症例の予後を数量的に予測できると思われる.

キーワード
甲状腺髄様癌, カルシトニン倍加時間, 減量指数, 期待延命期間, 期待生存期間


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