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日外会誌. 88(1): 81-88, 1987


原著

ビリルビンカルシウム石の溶解および崩壊に関する基礎的研究
―とくに蛋白分解酵素および胆汁酸の併用効果について―

東北大学 医学部第1外科教室(主任:佐藤寿雄教授)

趙 弘実 , 新谷 史明 , 高橋 渉 , 鈴木 範美

(昭和61年3月20日受付)

I.内容要旨
ビリルビンカルシウム石(ビ石)の直接溶解剤として,蛋白分解酵素のプロナーゼE(PE)及び胆汁酸とEDTA・4Naとの併用におけるビ石の溶解・崩壊効果について基礎的な検討を行い,以下の結果を得た.
(1)PEは,低濃度(0.05~1%)溶液(pH7.4付近)で数時間以上ビ石の薄切切片を前処理すれば,1%EDTA・4Na溶液による切片溶解を促進させた.この前処理効果は組織化学的検討からビ石中の酸性ムコ物質をPEが消化・分解することで起こることが推定された.
(2)PE・コール酸ナトリウム(CA)・EDTA・4Naの3剤混合液(pH 8.5)による切片溶解力は,短時間ではCA・EDTA液と差異を認めなかつた.結石溶解実験では,一部の結石でPE・CA・EDTA液は,CA・EDTA液と違い,酸性ムコ物質と考えられる構造物を分解しながら結石を溶解・崩壊した.
(3)各種胆汁酸とEDTA・4Na混合液では,25mM濃度のCA,CDCA,UDCAおよびTCAの各胆汁酸間には,切片溶解力に大きな差異は認められなかつた.しかし,TCA 100mMでは,25mMに比べ約2倍の溶解力を示した.結石溶解実験では,TCA(100mM)・EDTA液にはCA(23.3mM)・EDTA液に比べ著明な溶解効果が認められた.
(4)以上から,ビ石の直接溶解剤として,PEにはEDTA・4Naとの併用効果が認められたが,特に同時併用より異時併用が有力であることが示唆された.EDTA・4Na併用胆汁酸としては,TCA 100mMは切片,結石溶解とも著明な溶解効果を有し,極めて有望であることが示された.

キーワード
胆石溶解剤, ビリルビンカルシウム石, EDTA・4Na, プロナーゼ E, 胆汁酸

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