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日外会誌. 88(1): 35-40, 1987


原著

微粒子活性炭(CH44)を用いた胃癌における大動脈周囲リンパ節の転移の検討

*) 京都府立医科大学 第1外科
**) 京都第二赤十字病院 外科

高橋 滋*) , 高橋 俊雄*) , 沢井 清司*) , 萩原 明於*) , 徳田 一**) , 加藤 元一**) , 竹中 温**)

(昭和61年3月25日受付)

I.内容要旨
従来のR3郭清に加え上腸間膜動脈根部リンパ節(No.⑭A)および横隔膜より下腸間膜動脈根部にいたる腹部大動脈周囲リンパ節(No.⑯)郭清を施行したPS(+)胃癌68例におけるNo.⑯リンパ節の転移率は29.4%と高率であり,これら第4群リンパ節転移陽性n4(+)症例の累積5年生存率は20.0%であつた.このうち微粒子活性炭CH44を術前内視鏡下に癌周囲粘膜下層に注入した26例について,No.⑯リンパ節転移の様相をCH44による黒染との関連により検討した.その結果,リンパ節が癌で高度に置換された長径7.6mm以上の転移高度リンパ節では黒染度は48.7%とあまり高くないが,転移軽度及び中等度のリンパ節では74.4%と,転移陰性のリンパ節の60.4%に比し有意に高率であつた.これは胃癌のリンパ行性転移の方向にCH44が流れ,リンパ節が黒染されるためと考えられた.またリンパ節の大きさと転移の関係を検討したところ,大きなリンパ節は転移の頻度が高かつたが,径2mm以下の微小リンパ節にも15.9%に転移が認められた.このような微小リンパ節は手術時肉眼では見逃されやすいが,CH44はこれらを明瞭に黒染するため,郭清の指標として極めて有用であつた.これらの結果から,PS(+)胃癌においては第4群であるNo.⑯リンパ節に高率に転移があり,郭清の必要性を認めた.そのさいCH44の術前内視鏡下注入は,遠位リンパ節郭清の指標として有用と考えられた.またCH44に抗癌剤を吸着させ用いることにより,郭清困難な遠位の微小転移巣の治療への臨床応用が可能と考えられた.

キーワード
胃癌, 腹部大動脈周囲リンパ節, 長径別転移度, 転移面積比, 微粒子活性炭(CH44)

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