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日外会誌. 88(1): 6-13, 1987


原著

重症ショックにおける体液管理の指標

日本医科大学 救急医学教室

矢埜 正実 , 渡辺 千冬 , 須崎 紳一郎 , 大塚 敏文

(昭和61年4月22日受付)

I.内容要旨
進行したショックの輸液療法と循環のパラメータについて検討した.対象は最近の2年間に経験した9症例,16~60歳,内訳は敗血症5,壊死性膵炎2,脂肪塞栓2例である.治療は循環を安定させ且つ利尿を得るためにfluid resuscitationを行つた.これらの9症例についてretrospectiveに入院時のCVP,経過中のCVP,PCWP肺および腎機能から適切な治療法を模索した.9症例中3例が死亡した.その原因は治療に反応しなかつたショック1例,脂肪塞栓で脳浮腫そして脳死となつた1例とショックは改善したが最終的には原因不明の敗血症で死亡した1例である.生存した6症例中乏尿性腎不全,非乏尿性腎不全がそれぞれ2例あつた.また9症例中8例が人工呼吸を必要とする肺障害を起こしたが,1例(無反応性ショック)を除く,7例はPEEPにより回復した.輸液投与量は5,445ml/10hrs~15,820ml/14hrsに及びその速度は545ml/hr~1,248ml/hrであつた.入院時のCVPは4~22cmH2O(3.0~16.3mmHg)でその平均は14.0+6.5cmH2Oと低くは無かつた.経過中のCVP,PCWPの最高圧は12.5~26.5(平均19.8±3.7)mmHg,14~36(20.9±7.8)mmHgと高い.適切なHuid resuscitationは腎機能を保持しひいては良好な予後をもたらすと云われており,そのためには18~20mmHgと正常よりも高いCVP,PCWPが必要と思われる..

キーワード
ショック, 輸液療法, 中心静脈圧(CVP), 肺動脈楔入圧(PCWP), 腎機能


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