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書誌情報]
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日外会誌. 87(12): 1576-1582, 1986
症例報告
Downhill esophageal varices の1例
-腹部大動脈瘤および上下大静脈閉塞をきたした Behçet 病-
I.内容要旨不全型Behçetとして加療中vasculo-Behçetとしての症状が進行し腹部大動脈瘤の形成及び上下大静脈閉塞を来し最終的に大量消化管出血にて死亡した1例を報告する.患者は39歳男子,昭和54年よりBehçet病として加療中であつた.58年3月増強する腹痛にて発症,大動脈分岐部直上の嚢状動脈瘤の切迫破裂の診断を得,大動脈瘤切除,欠損部のパッチ閉鎖術を行つた.3週間で退院,その後58年7月末,再び強い腹痛を呈し来院,パッチ閉鎖部の再破裂を認めた.Y字型人工血管による大動脈置換術施行.術後経過は良好であつたが,同時期より顔面,頚部,上胸部の腫脹が出現,両正肘静脈よりの静脈造影にて両鎖骨下静脈,腕頭静脈,上大静脈の狭窄ないし閉塞が認められた.またこの患者は下大静脈の閉塞も見られ,静脈造影とDSA(digital subtraction angiography)にて総腸骨静脈の血流は直腸静脈叢を介して下腸間膜静脈より門脈を経て下大静脈に還流しているのが確認されている.
二回目の術後しばらく小康を保つていたが昭和60年5月,吐血を見るようになつた.上部消化管精査にて全食道にわたる食道静脈瘤が見られた.門脈圧亢進症を示す所見なく上大静脈閉塞を原因とするdownhill esophageal varicesと診断された.縦隔内腫瘍,縦隔線維症等を原因とするdownhillesophageal varicesは散見されるが,Behçet病を原因とする本疾患は極めて稀である.根本的な治療法は未だに確立されていない.
キーワード
腹部大動脈瘤, downhill esophageal varices, Behçet 病
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