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日外会誌. 87(12): 1564-1568, 1986


原著

腹部大動脈 Bifurcated Graft 術後の麻痺性イレウス発症の原因と対策

山形大学 医学部第2外科

倉岡 節夫 , 折田 博之 , 西村 和典 , 星 永進 , 小林 稔 , 鷲尾 正彦

I.内容要旨
山形大学第2外科において昭和60年12月までに腹部大動脈瘤49例(以後AAA,うち7例は瘤破裂による緊急手術)高位閉塞性の閉塞性動脈硬化症17例(以後高位ASO,うち3例は血栓症による緊急手術)を経験し,AAAに対してはY-graft replacementを44例と,tube graft interpositionを5例に,高位ASOに対しては全例Y-bypass graftingを施行した.術後早期の消化器合併症としては上部消化管出血がAAAに2例,高位ASOに2例(以下同順),麻痺性イレウスが9例;0例,機械的イレウスが1例;1例(2例とも癒着剥離術施行),下痢・粘血便などの腸管虚血症状が4例;0例,肝機能障害が4例;0例に認められた.ただし急性腎不全による手術死(その中には瘤破裂によるshock入院2例を含む)に伴うuremic enteropathy 4例;2例は除外した.ここでは麻痺性イレウスの発症原因について発症群と非発症群に分けて比較し,併せて対策を検討した.結果は年齢,手術の難易,手術の緊急性には差はなく,手術時間にのみ有意差を認めた(発症344±106分 非発症284±80分p<0.05).またイレウス発症群は術前より,低K血症・低蛋白血症を呈する傾向があつた.さらに麻痺性イレウスはAAAにのみ認められた.対策としてAAAにおける手術時間の短縮化が望まれる.そのためには正確な術前状態のリスク把握の上での十分な術式の検討,術中の腸管保護の徹底,術前からの血清電解質の補正や栄養状態の改善が必要と考えられた.

キーワード
腹部大動脈瘤, 閉塞性動脈硬化症, Y-グラフト, 消化器合併症, 麻痺性イレウス

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