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日外会誌. 87(12): 1526-1539, 1986


原著

大腸腺腫,腺腫内癌の走査電子顕微鏡および完全連続切片法による三次元的分析

浜松医科大学 第1外科
*) 東京大学 医学部第2外科

大久保 忠俊 , 吉村 敬三 , 橋本 大定*)

(昭和61年3月14日受付)

I.内容要旨
走査電顕法と完全連続切片法とを組み合わせることにより,大腸腺腫および腺腫内癌の三次元的分析を試みた.
検索に用いた材料は,内視鏡的および手術的に採取されたヒト大腸腺腫32例と,hyperplastic polyp5例,正常大腸粘膜4例,進行大腸癌5例であり,まず走査電顕を用いて粘膜表面形態を観察,撮影し,mucosal surface mapを作成した後,その同一標本を2%重曹水で軟化せしめ(もどし光顕),HE完全連続切片を作成し粘膜内部の腺管構造を観察した.そしてその両所見を対比させ,それぞれの組織形態を三次元的に分析した.
大腸腺腫の粘膜表面形態は走査電顕所見により,I型(類円型),II型(長楕円型),III型(分枝型),IV型(脳回型),V型(皺襞型),VI型(不整型)の6型に分類され,さらに粘膜表面形態と腺腫の大きさ,組織型,異型度との関連性につき検討した.
その結果,腺腫が大きくなるに従つて,II型,III型,IV型の順に頻度が高くなる傾向がみられたが,V型腺腫の大きさはIV型腺腫とほぼ同程度であつた.またI~IV型はtubular adenomaに,V型はtubulo-villous adenomaあるいはvillous adenomaに特徴的であつた.異型度については,I型,II型は軽度,III型,IV型は中等度,V型はさらに高い傾向を示した.腺腫内癌の粘膜表面形態はいずれもVI型を呈していた.
以上の結果から,大腸腺腫を走査電顕を用いて観察することにより,その粘膜表面形態から同一部位の内部腺管構造,ひいては大腸癌の最も初期の組織形態である腺腫内癌を分析することが可能であると考えられた.また拡大大腸内視鏡検査法が進歩しつつある現在,大腸癌をより早期に発見するためにも,大腸腺腫を走査電顕法と完全連続切片法とにより三次元的に分析することは極めて重要な臨床的意義をもつものと考えられる.

キーワード
大腸腺腫, 腺腫内癌, 大腸腺腫の癌化, 大腸腺腫の走査電子顕微鏡


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