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日外会誌. 87(10): 1330-1334, 1986


原著

肝切除術術後に発生した難治性腹水に対する β-blocker の効果

大阪大学 医学部第2外科

大里 浩樹 , 後藤 満一 , 門田 守人 , 岡村 純 , 森 武貞

(昭和60年2月18日受付)

I.内容要旨
慢性活動性肝炎及び肝硬変合併肝細胞癌症例の肝切除術後,Na制限(5g/日),利尿剤,蛋白製剤等の投与によりコントロールできない難治性腹水の発生をみたが,β-blockerであるpropranololを併用することにより劇的な腹水の消褪をみた.
この肝性腹水に対するpropranololの効果は,腎の旁糸球体装置のβ-adrenergic receptorをblockし血中レニン活性を正常化しレニン,アンギオテンシン,アルドステロン系(以下RAA系)全体を抑制することにあると思われる.これにより,アルドステロンによる腎でのNaの再吸収が抑制されるぼかりでなく,レニン,アンギオテンシンIIによる門脈圧上昇作用,抗利尿ホルモン分泌作用をも抑制し,腹水を消褪せしめると考えられる.

キーワード
propranolol, β-blocker, レニン, アンギオテンシン, アルドステロン系

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