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日外会誌. 87(10): 1313-1323, 1986


原著

微小胃癌および小胃癌の臨床病理学的研究
-特に胃癌の初期進展様式とその臨床的意義について-

東北大学 第1外科学教室(指導:佐藤寿雄教授)

菅原 暢 , 大内 明夫 , 清水 文人

(昭和61年1月20日受付)

I.内容要旨
教室例の早期胃癌671例の組織学的計測により,長径5.0mm以下の微小胃癌14病巣,5.1~10.0mmの小胃癌34病巣を得,これらの臨床病理学的検討により,以下の知見を得た.
1)長径が10mm以下の早期胃癌は,11mm以上の早期胃癌と比較して,肉眼型では平坦型が多く,隆起型が少ない,組織型では分化型胃癌の割合が多く,未分化型胃癌が少ない.さらには多発胃癌の一病巣として存在する病巣が多いとの特徴をもつていた.
2)長径10mm以下の早期胃癌の粘膜下浸潤率は,多発胃癌の一病巣として存在するものでは8.3%のみであつたが,単発例では30.6%と高率であつた.
3)粘膜下浸潤を認めた最小の癌巣は,長径が3.2mmのもので,この病巣の粘膜下層では小血管への癌浸潤像が認められた.
4)胃癌発生後の初期粘膜内進展形態は,組織型によつて異なり,分化型胃癌では発育の極く初期と考えられる段階では,粘膜深層を中心として癌が拡がつていることから,小さな癌巣であつても粘膜下浸潤を来たす可能性をもつていることが示された.
5)分化型胃癌の初期粘膜下侵入様式は,小血管やリンパ管が粘膜筋板を貫く既存の組織間隙を利用するものであつた.
6)微小胃癌および小胃癌の周辺粘膜と組織型の関係,および癌細胞の粘液組織化学的特徴より,分化型胃癌と腸上皮化生粘膜,未分化型胃癌と胃固有粘膜が組織発生の上で密接な関係を有することが示された.
7)粘液組織化学的な腸上皮化生粘膜の亜分類の検討より,分化型胃癌の組織発生は,不完全型腸上皮化生粘膜とより密接な関係を有することが示されたが,癌の占居部位別の検討や,化生の経時的な変化と発癌の関係についても検討されなければならないと考えられた.

キーワード
微小胃癌, 小胃癌, 早期胃癌, 腸上皮化生


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