[書誌情報] [全文PDF] (3595KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 87(8): 900-906, 1986


原著

下腸間膜動脈断端血圧よりみた結腸虚血予防のための腹部大動脈瘤血行再建術式に関する研究

兵庫医科大学 胸部外科

岡 良積 , 宮本 巍 , 村田 紘崇 , 青木 啓一 , 前田 信証 , 山下 克彦 , 北井 公二

(昭和60年11月13日受付)

I.内容要旨
過去5年間において手術を行つた非破裂性腹部大動脈瘤60例に対し,結腸虚血予防の目的で術中に下腸間膜動脈(IMA)断端血圧測定を行い,その値を参考にして再建術式を決定してきたので,その成績について検討を加えた.再建後の平均IMA断端血圧は30~120mmHg(平均68.4±16.2mmHg)で,その対平均体血圧比(IMA/syst圧比)は0.30~1.0(平均0.71±0.14)であつた.Ernstの基準(IMA断端平均血圧が40mmHg以上またはIMA/syst圧比が0.4以上ならばIMA再建は不要)を下回つたものは60例中2例(3.3%)のみで,これらにはIMAの再建を行つたが,1例は再建が12時間後となつたため結腸虚血を発生した.上記基準を満たした58例においては,2例に結腸虚血の発生がみられたが,これらはそれぞれ結腸間膜の強度の圧排牽引による損傷,あるいはIMA分枝の不適切な切断が原因となつたもので,愛護的かつ慎重な手術操作の必要性を再確認させられた.しかし残り56例には結腸虚血の発生はみられず,上記基準は信頼できるものと思われた.またIMA断端血圧を参考とすることにより,約半数の症例で一側または両側の内腸骨動脈の再建も省略することが可能であつた.このようにIMA断端血圧測定法は本合併症予防のための簡便で有用な方法であり,この値を参考とすることにより手術々式を簡略化することが可能であり,手術成績の向上につながるものと思われる.

キーワード
腹部大動脈瘤, 大動脈血行再建, 結腸虚血, 虚血性大腸炎, 下腸間膜動脈断端血圧

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。