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日外会誌. 87(8): 846-852, 1986


原著

成人における長期高カロリー輸液中の肝障害

*) 天理よろづ相談所病院 腹部外科
**) 天理よろづ相談所病院 病理

松末 智*) , 武田 博士*) , 柏原 貞夫*) , 小橋 陽一郎**)

(昭和60年12月12日受付)

I.内容要旨
成人における長期高カロリー輸液(IVH)中の肝障害の特徴について1975年から1984年までに天理よろづ相談所病院において,60日以上のIVHを受けた51例(男30例,女21例)を対象に検討した.IVH中の肝機能の変動を表すのに肝細胞障害度(CII),胆汁鬱滞度(BSI)を示すIndexを用いたところ,I型(33例):一過性の異常,II型(14例):IVH中持続的異常,III型(4例):肝不全により死亡,の3群に分類し得た.II・III型の18例(35.3%)が肝障害例と考えられた.3群間には年齢,性,IVH期間,原疾患に差はなかつたが,IVHに起因する合併症のうち,代謝性合併症の発生頻度では,II型(5例,35.7%)がI型(2例,6.06%)に比して有意に高かつた(p<0.05).又,III型に陥るには,感染等の要因が強く示唆された.手術時生検6検体,剖検7検体による組織学的検索では,肝細胞脂肪変性,グリソン鞘の線維化,胆管増生が認められ,臨床的重症度との関係では肝細胞の変化よりグリソン鞘の変化の方が相関が高かつた.肝障害の経過観察,予後予測には,肝細胞性酵素(CII)の変動より胆道系酵素と血清総ビリルビン値(BSI)の変動の方が重要な指標となつた.

キーワード
IVH 中の肝障害, TPN, 胆汁鬱滞, 代謝性合併症, グリソン鞘線維化

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