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日外会誌. 87(8): 834-845, 1986


原著

Human Tumor Clonogenic Assay法を用いた制がん剤感受性試験に関する実験的ならびに臨床的研究

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)部門(指導:服部孝雄教授)

平林 直樹

(昭和60年12月6日受付)

I.内容要旨
In vitro制がん剤感受性試験としてSalmonらの開発したHuman tumor clonogenic assayを用い,ヒト悪性腫瘍119症例に対して制がん剤感受性試験を行い以下の結果を得た.
1.腫瘍別にコロニー形成能をみると,胃がん35/50(70.0%),大腸がん10/17(58.8%),乳がん13/14(92.9%),食道がん2/6(33.3%),肉腫3/6(50.0%),血液系腫瘍3/16(18.8%),その他の腫瘍7/10(70.0%)にコロニー形成(≧5コロニー/dish)を認め,腫瘍間でコロニー形成能に差があつた.
2.制がん剤感受性の判定は54症例に可能であり,薬剤別に感受性を示した割合をみるとMitomycin(C(MMC)26.9%,5-Fluorouracil(5-FU)21.6%,4-hydroperoxy Cyclophosphamide(CPM)10.5%,Adriamycin(ADM)26.9%,Cis-dichlorodiammineplatinum(CDDP),36.8%,α-interferon(IFN-α)23.3%であつた.また,腫瘍別に薬剤感受性を検討すると,胃がんではMMC24.0,5-FU 21.1%,大腸がんではMMC 33.3%,5-FU 33.3%,乳がんではMMC 18.2%,5-FU 16.7%で薬剤感受性(+)と判定され腫瘍間で制がん剤に対する薬剤感受性のspectrumが異なつていた.
3.制がん剤感受性判定結果と臨床効果との対比は18薬剤について可能でありtrue positive rate 2/4(50%),true negative rate 13/14(92.9%)であつた(X2-test,p<0.05).
4.IFN-αとMMCとの併用効果を消化器系腫瘍20症例について検討したところ相乗効果9/20(45%)に認めたが,拮抗効果も3/20(15%)に認めた.
5.培養条件中の酸素濃度を2%,5%,20%と変更しコロニー形成に及ぼす影響について検討したところ,生理的酸素濃度と考えられる5%O2での培養においてコロニー形成が一番良く従来の培養条件(20%O2)に比べてPlating efficiencyの有意の増加を認めた(t-test,p<0.025).

キーワード
制がん剤感受性試験, Human tumor clonogenic assay, In vitro phase II study


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