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日外会誌. 87(7): 781-788, 1986


原著

門脈圧亢進症患者における Hyperdynamic circulationと血中ホルモン濃度とに関する研究

防衛医科大学校 第2外科

米川 甫 , 島 伸吾 , 杉浦 芳章 , 吉住 豊 , 大塚 八左右 , 田中 勧 , 尾形 利郎

(昭和60年10月16日受付)

I.内容要旨
門脈圧亢進症に特有とされるhyperdynamic circulationの成立機序の一端を明らかにするため,本疾患患者30例を対象として肝機能検査成績,全身循環動態,8種の血中ホルモン濃度の3種目をとりあげ,相互の関係につき検討した.
1)対象例は肝硬変23例,特発性門脈圧亢進症3例,慢性活動性肝炎2例,その他2例であり,門脈圧は343±55mmH2O,(M±SD)であつた.
2)肺動脈楔入圧(PCWP)は6.7±3.3mmHg,心係数(CI)は4.6±1.2l/min.m2,全末梢血管抵抗(SVR)は942±290dynes.sec.cm-5であつた.
3)血中ホルモン濃度はグルカゴン(Glu)160±80pg/ml,アルドステロン(Ald)139±91pg/ml,レニン(Ren)5.4±6.4ng/ml,ノルエピネフリン(Nor)0.23±0.10μg/mlなどであつた.またエストロン(E1),エストラジオール(E2)なども増加していた.
4)総ピリルビン(T-Bil)及びICG R15とCIとの間には正の相関が認められた.
5)GluとT-bil及びIcG R15との間には正の相関が認められた.Aldとコリンエステラーゼとの間には負の相関が認められた.その他のホルモンと肝機能障害との関係は認められなかつた.
6)GluはCIと正の相関,SVRと負の相関を示した.Nor,エピネフリン(Adr)はSVRと正の相関を示したが,CIとの関係は認められなかつた.
7)以上より,Gluは本疾患に特有とされるhyperdynamic circulationの要因の1つであると結論された.AldやAdrなど他のホルモンは直接には関与しなかつた.

キーワード
門脈圧亢進症, 肝硬変, 循環動態, 血中ホルモン濃度, グルカゴン

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