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日外会誌. 87(7): 759-773, 1986


原著

胆道閉塞解除後における胆汁酸補充投与の意義に関する実験的および臨床的研究

東京大学 医学部第3外科学教室(指導:近藤芳夫教授)

津田 寛

(昭和60年2月16日受付)

I.内容要旨
胆道閉塞解除後の肝細胞機能と胆汁分泌動態について,胆汁酸排泄とビリルビン排泄の相関,色素移送能,胆汁酸処理能および毛細胆管の超微形態像を中心に検討した.
1)胆道閉塞解除後には対照群に比して胆汁中総胆汁酸排泄量の増加が抑制されており,胆汁酸合成の障害が示唆された.
2)胆汁酸を持続負荷して胆汁酸排泄量と胆汁流量との関係をlinear regressionで求め,その勾配a値を比較すると,閉塞解除群では対照群に比してa値の増加が認められた.またミセル形成性のsodium taurocholateを持続負荷すると胆汁酸排泄量の増加とともにビリルビン排泄量の直線的な増加が得られた.
3)〔35S〕-BSPの血中消失曲線において移行率a値(肝摂取率)は解除後48時間で正常化するが,h値(胆汁移行率)は著明な低下を示した.また胆汁中累積回収率にも有意の減少がみられた.このような色素移送障害に対してsodium taurocholateを投与するとh値および胆汁中累積回収率に著明な改善が認められた.
4)14c-taurocholic acidの血中消失曲線および胆汁中排泄曲線の解析では,閉塞期間が延長するとarea under curveおよび胆汁中累積回収率に異常が認められた.
5)臨床のPTCD症例における ursodeoxycholic acid 負荷試験では,ビリルビン排泄促進効果(Σ⊿BR)と胆汁酸処理能を表わす3つの指標(空腹時血中胆汁酸,負荷後のピーク値,および area under curve)とは負の相関を示し,胆汁酸の摂取・排泄能が低下した症例では胆汁酸によるビリルビン排泄促進作用も殆ど発現しないことが示された.
6)胆道閉塞時および閉塞解除後早期の電顕像では毛細胆管に著明な変化がみられた.
以上の結果から,胆道閉塞解除後には肝の胆汁酸処理能から肝障害の程度を判定し胆汁酸の補充投与によりビリルビン排泄促進を計ることが妥当であると考えられた.

キーワード
閉塞性黄疸, 胆道閉塞解除, BSP 移行率 (a, b, h), 胆汁分泌, 胆汁酸負荷試験

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