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日外会誌. 87(5): 564-571, 1986


原著

超音波像における結節性甲状腺腫の良・悪性の検討
-形態・辺縁・内部エコー・境界の4因子の,各組織との相関-

*) 鹿児島大学 医学部第1外科
**) 癌研究会付属病院 外科

森藤 秀美*) , 吉中 平次*) , 黒島 一直*) , 浜田 長輝*) , 加治佐 隆*) , 島津 久明*) , 西 満正**)

(昭和60年7月27日受付)

I.内容要旨
1979年から1985年3月までの間に当科で超音波検査を行ない手術によつて組織学的診断の確定した結節性甲状腺腫102例について,超音波像と組織学的診断との相関関係を検討した.
術前超音波診断では,58例の悪性腫瘍のうち45例(78%)を悪性と診断,44例の良性疾患中,38例(86%)を良性と診断できた.
また充実部を主体とする結節75例について超音波像における形態,辺縁,内部エコー,境界の4因子について良・悪性との関係をみると,形態,辺縁の性状が最もよい相関を示し,形態不整34例中33 例(97%)が悪性,辺縁不平滑な42例中40例(95%)が悪性であつた.さらに,形態不整,辺縁不平滑の少なくとも一方の性質を有する腫瘤45例中43例(96%)が悪性で,どちらの性質も有しないもの30例中24例(80%)が良性であつた.内部エコーに関しては,悪性49例中42例(86%)が不均一であつたが,同時に良性疾患でも26例中15例(58%)の内部エコー不均一例があり,超音波診断に関するかぎり,内部エコーが均一か否かという判定だけでは積極的な診断根拠とはなりえなかつた.リンパ節転移陽性34例中15例に,超音波にて転移リンパ節を検出でき,甲状腺癌の超音波診断に有力な根拠を与えることができた.
結節性甲状腺腫の超音波診断は超音波像の各因子を個々に判読すべきで,これらの各所見が示唆する組織学的な性状をふまえて鑑別をすすめることにより,本質的な診断が期待できると思われた.

キーワード
結節性甲状腺腫, 超音波検査, 甲状腺癌, リンパ節転移


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