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日外会誌. 87(5): 547-557, 1986


原著

先天性胆道拡張症の病理組織学的研究
-とくに胆道内膵液逆流現象との関連について-

大阪大学 医学部外科学第1講座(主任:川島康生教授)

大口 善郎

(昭和60年7月11日受付)

I.内容要旨
先天性胆道拡張症の病理組織像に胆道内への膵液逆流現象がいかなる関与をしているかを検討する目的で,臨床例40例の手術時摘出された拡張部胆道壁の検索をおこない臨床像との関係につき検討した.また雑種成犬を用いて胆道内膵液逆流モデルを作成し,胆道系の病変を観察して臨床例との比較をおこなつた.臨床例の組織像は,①粘膜固有層や線維層内に慢性炎症性細胞浸潤を伴つた粘液腺増生ならびに,②膠原線維の発達を伴つた壁の肥厚という2つの組織所見が相侯つて認められた.前者の所見が優位にみられる症例(腺腔形成型)は腹痛を主訴とするものが多く,後者の所見が優位にみられる症例(線維化型)は黄疸を主訴とするものに多かつた.術前の最高総ビリルビン値,アルカリフォスファターゼ値は線維化型において,胆汁中アミラーゼ値は腺腔形成型において有意に高値であつた.嚢腫型胆道拡張症例の組織所見は腺腔形成型・線維化型の双方が存在し,前者は年齢が経るにつれて高度例が増加する傾向にあつたが円柱型のそれは腺腔形成型のみであつた.胆道内膵液持続流入モデル犬の作成により円柱型胆道拡張がみられ,総胆管壁には臨床例と酷似した炎症性細胞浸潤を伴う粘膜固有層ならびに壁内の粘液腺増生等の組織所見がみられた.これらより本症胆道壁にみられ る炎症性細胞浸潤を伴つた粘液腺増生は胆道内への膵液逆流現象が関与することにより形成されるものと考えられた.

キーワード
先天性胆道拡張症, 膵管胆道合流異常, 粘液腺増生


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