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日外会誌. 87(5): 510-517, 1986


原著

閉塞性黄疸時の急性潰瘍発生に関する実験的研究
-特に,減黄術の胃粘膜血流と胃粘膜エネルギー代謝におよぼす影響について-

東北大学 医学部第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

成井 英夫 , 佐々木 巌 , 今野 喜郎 , 神山 泰彦

(昭和60年8月22日受付)

I.内容要旨
閉塞性黄疸および減黄モデルにおける胃粘膜血流,胃粘膜エネルギー代謝を測定し,閉塞性黄疸時の急性潰瘍発生機序と黄疸時の病態におよぼす減黄術の効果について実験的に検討した.
対象および方法:体重250g前後のSD系雄性ラット339匹を用い対照群(単開腹),黄疸群(胆管結紮切離後2週)および減黄群(胆管にシリコンチューブを挿入し,黄疸作成後2週目にチューブを開放)を作製し,それぞれに水浸拘束負荷して2時間毎に8時間まで潰瘍係数,胃粘膜血流,胃粘膜エネルギー代謝および肝機能を測定した.なお,減黄群は減黄直後,減黄後1および3日目について検討した.胃粘膜血流は水素ガスクリアランス法を,ATP,ADP,AMPは酵素学的定量法を用いた.
成績:1.潰瘍係数は拘束前においてはいずれの群においても差は認められなかつたが,拘束後は黄疸群で高値を示したのに対し,減黄群では低値を示し減黄3日群で対照群に近い値になつた.
2.胃粘膜血流量は拘束前・後において対照群に比し黄疸群で有意の減少を認めたが,減黄群では減黄1日群で黄疸群に比し高値を示し,3日群では対照群とほぼ同様の値に回復した.
3.胃粘膜energy chargeおよびATPは黄疸群において対照群に比し低値を示したが,減黄群では減黄直後より回復傾向を認め,減黄1日群で対照群に近い値となつた.
以上,減黄術の効果を検討することにより,閉塞性黄疸時の急性潰瘍発生には黄疸そのものによる胃粘膜防御因子の減弱が重要な因子であることが確められた.また,減黄術は胃粘膜血流,胃粘膜エネルギー代謝を改善することにより胃粘膜防御因子の低下を防ぎ急性潰瘍の発生を予防する効果があると考えられた.

キーワード
急性潰瘍, 胃粘膜血流, 胃粘膜エネルギー代謝, 閉塞性黄疸, 減黄術


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