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書誌情報]
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日外会誌. 87(5): 482-487, 1986
原著
腫瘍凍結手術後の凍結壊死抗原吸収機序に関する実験的研究
I.内容要旨5週齢SD系ラット大腿部皮下にMRMT-1腫瘍を移植し,7日目に経皮的圧抵法にて-170℃ 2回凍結手術を行い,術後経時的にcolloidal carbon灌流法にて血管構築の変化を,水素クリアランス法にて局所血流量の変動を,さらに
3H-thymidineを腫瘍内に注入後凍結して,各臓器分布の変動を検索することにより凍結壊死物質の吸収経路と経過を観察し,以下の結果を得た.
(1)凍結後30分~1時間後:血管内腔は赤血球で充満し,拡張,蛇行がみられたがcarbonの流入および血流はみられず,
3H-thymidineの取り込みも殆んどみられなかつた.(2)6時間後:vascular stasis,sludgingが最も著明でcarbonの流入,血流はみられなかつたが,領域リンバ節中
3H-thymidine の取り込みは著明に増加した.(3)24時間後:細血管内へのcarbonの流入と腫瘍周辺部での血流が確認され,血清中
3H-thymidineの取り込みがさらに増加した.(4)72時間後:carbonの細血管への流入の増加と血流の回復がみられたが,凍結腫瘍は硝子様変性を示した.(5)168時間後:新生血管の増加,血流の正常化がみられたが,腫瘍は分界され,
3H-thymidineの取り込みは低下した.
以上の結果,凍結壊死腫瘍抗原は術後6時間前後には凍害により破綻された組織間隙から先ず領域リンパ節に捕捉されリンパ行性に,また24時間目からは血行性に吸収され,これが72時間目まで続くことが判明した.
キーワード
凍結壊死腫瘍抗原, 凍結免疫, ラット実験腫瘍, 血管構築
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