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日外会誌. 87(4): 423-434, 1986


原著

肝再生におよぼす脾摘の影響に関する実験的研究

大阪市立大学 医学部第1外科(主任:梅山 馨教授)

谷浦 賢

(昭和60年8月15日受付)

I.内容要旨
従来より特発性門脈圧亢進症やthioacetamide,四塩化炭素投与ラットにおいて脾摘により肝の線維化が軽度にとどまることが知られているが,脾摘による肝病変の改善の機序はいまだ不明な点が多い.脾摘により肝再生が促進されれば肝病変が改善する機序の一端が明らかになると思われる.そこで,SD系雄性ラットを用い肝部分切除をおこなつた後の肝再生におよぼす脾摘の影響について,検討し以下の結果を得た.
脾摘後に70%肝部分切除(脾摘群)をおこなうと肝切2日目および4日目における体重あたりの肝重量は脾摘をおこなわず肝部分切除をおこなつた群(非脾摘群)より有意に増加し,肝切24時間後における残存肝のDNA合成を3H-thymidineのDNAへの取り込みを指標として検討すると脾摘群は非脾摘群より有意に高値を示した.また,残存肝のthymidine kinase活性も脾摘群の方が有意に高かつた.肝切24時間後の3H-thymidineの肝細胞核内へのとりこみをmicroautoradiographyにて観察しlabeling indexを算出すると脾摘群は非脾摘群より有意に高値を示し,mitotic indexも同様の傾向にあつた.一方,脾摘後,肝切除時に脾臓抽出液を腹腔内に注入した群および脾を腹腔外に移行した後肝切除をおこなつた群での肝細胞核でのDNA合成並びにmitotic indexはいずれも脾摘群より低値を示した.
以上の結果から,肝部分切除後の肝再生に脾は抑制的に働いており,脾には何らかの肝再生抑制因子が存在する可能性が推測された.

キーワード
肝部分切除, 肝再生, 脾摘, DNA 合成, 肝再生抑制因子

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