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日外会誌. 87(4): 418-422, 1986


原著

同所性同種肝移植の実験的研究
-低体温無灌流肝の動脈遮断法による移植-

鹿児島大学 医学部第2外科
*) 鹿児島大学 医学部第1病理

熊谷 輝雄 , 原田 袋蔵 , 風呂井 彰 , 上村 亮三 , 吉田 浩己*) , 平 明

(昭和60年7月29日受付)

I.内容要旨
犬で低体温下に肝を摘出,無灌流のまま選択的腹部主要動脈遮断法1)2)に,低体温法を併用して同所性に移植し,移植手技および移植肝のviabilityを移植犬の生存率から検討した.ヘパリンは使用せず,移植肝のwash outやperfusionも全く行わなかつた.摘出時肝温は,体表冷却および腹腔内局所冷却により約20℃を示した.
選択的腹部主要動脈遮断法では,腹腔動脈・上腸間膜動脈の遮断および腎下部大動脈遮断により,門脈・肝下部下大静脈共に高度の血液うつ滞はおこらず,無肝期の循環動態は安定していた.これに低体温法を併用すると,安全な遮断と十分な移植時間が得られた.
成績は,移植11例中6日以上の生存が5例で,outflow blockは5日未満での死亡例も含め全く認められず,臓器保存の観点から問題はなかつた.
本法では,同所性肝移植が安全確実に行え,臨床では特に幼小児に応用しうるものと考えられた.

キーワード
低体温, 肝移植, 無肝期, 動脈遮断


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