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日外会誌. 87(4): 375-386, 1986


原著

消化器担癌患者における好中球 superoxide 産生能に関する研究
-とくに,低栄養患者での検討-

長崎大学 医学部第1外科(主任:富田正雄教授)

中越 享

(昭和60年7月1日受付)

I.内容要旨
胃大腸癌を中心とする術前・未治療の消化器担癌患者98例を対象に,担癌生体での生体防御機構における好中球殺菌能の評価を目的として,末梢血好中球superoxide(O2-)産生能を測定し,特に低栄養状態患者での検討を行なつた.
(1)消化器担癌患者好中球O2-産生能は健常成人対照群に比し低下を示した.疾患別では胃癌患者で低下し,stageが進行するにつれ低下を示し,大腸癌患者でも同様の結果であつた.さらに術後septic な合併症を伴つた患者の術前・未治療時の好中球O2-産生能は低下していた.
(2)胃癌患者の術前栄養評価では進行胃癌患者では低栄養状態にあつた.
(3)栄養評価の重症度別に好中球O2-産生能を検討した結果,低栄養状態下にある消化器担癌患者の好中球O2-産生能は低下している事が示された.
(4)胃癌患者の栄養状態とstageを一定にして好中球O2-産生能を検討した結果,栄養良好患者は stage間で差がみられず,低栄養患者ではstage IVでのみ低値を示した.また,どのstageにおいても低栄養患者では栄養良好患者より低値を示した.
以上より,消化器担癌患者の術後septicな合併症発生の一因として好中球O2-産生能低下が考えられ,さらにその好中球O2-産生能の低下には栄養状態が強く関与している事が示唆されたが単一の因子のみによるものでない事がうかがわれた.

キーワード
好中球, superoxide, 感染防御, 低栄養, 消化器癌

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