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日外会誌. 87(2): 220-230, 1986


原著

末梢動静脈閉塞疾患と心筋梗塞における Protein C の動態並びに深部静脈血栓症患者で見出された Protein C 欠損症ホモ接合体と Plasminogen 分子異常症
ヘテロ接合体の合併症例

東京大学 医学部第1外科教室(主任:森岡恭彦教授)

間邊 俊一郎

(昭和60年4月19日受付)

I.内容要旨
Protein C(PC)は重要な血液凝固阻害因子であり,血栓症との関連が示唆されている.今回,下肢深部静脈血栓症(DVT)50例,Burger病(TAO)34例,閉塞性動脈硬化症(ASO)37例,心筋梗塞(MI)17例のPC抗原量をLaurell法により測定し,それら疾患におけるPCの動態とPC欠損症の有無を検討し,並びにDVT群で見出されたPC欠損症症例について報告する.なお,肝障害,DIC,悪性腫瘍,重症感染症,さらに,ワーファリン服用中の症例は対象から除外した。また,DVT,TAO,ASO 群は外来通院患者であり,MI群は17例中13例が急性期治療前,4例が陳旧時外来通院の患者である.結果,成人健常者30人におけるPC抗原量のmean±2SDは100.7±35.3%であつたが,DVT群50例では89.7±44.4%と低く,特に低値の2症例(40%と5%以下)を除いた48例でも92.5±34.7%と低かつた.なお,そのDVT 50例あるいは48例でも,健常群とTAO群に対しt検定上危険率5%以下で有意に低値であつた.また,TAO群のmean±2SDは100±29.5%,ASO群は97.5±27.5%,MI群は94.1±45.1%であり,TAO,ASO,MI群は健常群に対しあるいはそれら3群交互に有意差はなかつ た.次にPC欠損症について検討すると,TAO,ASO,MI群ではPC抗原量が特に低値のものはなく,PC欠損症を疑わせる症例はなかつたが,DVT群では2症例がPC抗原量40%及び5%以下と低値を示し,PC欠損症を疑わせた.さらに,PC抗原量5%以下の症例はPlasminogen(PLG)の分子異常症を合併しており,家系調査により,父と父方伯母はPC欠損症ヘテロ接合体(ヘテロ)とヘテロのPLG分子異常症であり,母と母方伯母はヘテロのPC欠損症であると判明した.したがつてこの患者は,PC欠損症ホモ接合体とヘテロのPLG異常症の合併症例であり,DVTの原因は,これら血液異常によるものと推定された.

キーワード
deep vein thrombosis, protein C, protein C deficiency, homozygous protein C deficiency, plasminogen molecular abnormality

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