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日外会誌. 87(2): 211-219, 1986


原著

Velour 人工血管器質化の実験的研究

横浜市立大学 医学部第1外科(指導:松本昭彦教授)

小林 理

(昭和60年4月17日受付)

I.内容要旨
細小動脈移植に最も有利なvelour surfaceを検討する目的でvelour surfaceの異なる内径4mmの人工血管を用い実験的研究をおこなつた.
実験は,Vasculour-Dグラフト,Sauvage external velourグラフト,Sauvageグラフトの3種類 を用いた.この3種類の人工血管はvelour surface以外にも構造に違いがある.そこで各々の人工血管を翻転し,velour surfaceが器質化におよぼす影響を研究するのに適した人工血管を作製した.雑種成犬に移植した人工血管は腹部大動脈に35頭35移植片,両外腸骨動脈に13頭26移植片,合計61移植片である.velour surfaceの違いにより内面velour型,外面velour型に分け,器質化について肉眼的ならびに組織学的に比較検討した.
各種velour人工血管の器質化は良好で,開存率は84%であつた.内面velour型では,移植後10日目より膠原線維の形成がみられ,早くも新生内膜形成が完成に近ずきつつあつた.移植後3カ月をすぎると新生内膜は完成していた.しかしVasculour-Dグラフトのように移植後も襞構造を保つと新生内膜は厚くなり,器質化もおくれる傾向にあつた.外面velour型では完成した新生内外膜ともに薄く,人工血管と密に固着癒合していた.すなわちvelour人工血管はvelour面が内側の場合でも外側の場 合でも新生内膜および外膜の器質化は優れていた.特に襞の浅いvelour人工血管では内面velourでも外面velourでもその器質化は良く,両者に差を認めなかつた.

キーワード
velour 人工血管, velour surface, 新生内膜の器質化, 細小動脈移植片


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