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日外会誌. 87(2): 133-140, 1986


原著

新しい化学塞栓物質5-Fluorouracil-poly L-lactic acid-microcapsule の基礎的ならびに臨床的研究

金沢大学 医学部第1外科教室
*) 石川県立中央病院 一般消化器外科

酒徳 光明 , 平野 誠 , 山下 良平 , 山田 哲司 , 川浦 幸光 , 岩 喬 , 北川 晋*)

(昭和60年4月10日受付)

I.内容要旨
癌治療における化学塞栓療法の効果増強を目的として,新しい塞栓物質5-FU-Poly L-lactic acid-microcapsule(FU-PLA-mc)を開発し,基礎的および臨床的研究を行なつた.
FU-PLA-mcは,生体内分解物質であるポリL-乳酸を被膜とし,5-FUを芯物質とするマイクロカプセル化製剤であり,有機相からの相分離の原理を応用し調製した.大きさは直経約200μmであり,5-FU含有率は約40%,in vitroでの5-FU溶出は50時間にわたり持続した.
In vitro実験において,正常家兎大腿動脈よりFU-PLA-mc 75mg(5-FU 30mg含有)注入後の血中5-FU濃度は,15分後に最高値1.03±0.16μg/gを呈し,その後徐々に低下した.一方,VX2腫瘍移植家兎の大腿動脈よりFU-PLA-mc 75mg(5-FU 30mg含有)注入後の腫瘍内5-FU濃度は,72時間後においても2.1±0.5μg/gと高値を呈した.そして,VX2腫瘍移植家兎を用いた抗腫瘍実験においては,同量のFU-PLA-mc投与群の腫瘍は著明に縮小し,14日後の対照群に対する腫瘍重量比T/C(%)は0.01%であつた.また,正常家兎に対するFU-PLA-mc肝動脈塞栓術の肝機能に及ぼす影響は,一過性であつた.
臨床的には,切除不能肝癌8例(原発性肝癌1例,転移性肝癌7例)に対し,FU-PLA-mc肝動脈塞栓術を施行した.要したFU-PLA-mcは150~250mgであり,他の塞栓物質を併用することなく,充分な肝動脈塞栓が可能であつた.全例に腫瘍縮小が得られ,3例(37.5%)にPRが得られた.そしてFU-PLA-mc肝動脈塞栓術に起因すると思われる重篤な合併症は認められなかつた.
以上より,AU-PLA-mcは化学塞栓療法の塞栓物質として極めて有用であると考えられる.

キーワード
化学塞栓療法, 5-Fluorouracil, 剤型変更制癌剤, ポリ L-lactic acid, マイクロカプセル制癌剤


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