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日外会誌. 87(1): 99-104, 1986


症例報告

S状結腸へ破裂穿孔した結核性腹部大動脈瘤の 1 例

青森労災病院 外科

高橋 賢二 , 丸山 章 , 相内 晋 , 百川 健 , 藤田 孟

(昭和60年4月4日受付)

I.内容要旨
患者は48歳男性.腰痛と腰部軟性腫瘤で当院整形外科に入院中であつたが,突然激しい下血とともにショックに陥つたために,出血点を検索すべく血管造影が施行された.しかし術中に再度大量の下血をきたし,血圧触知不可能となり意識も消失したため緊急手術をすべく手術室に搬送された.開腹すると腹腔内全体に結核特有の小結節が無数に散在し,結核性と思われる腹部大動脈瘤がS状結腸へ破裂穿孔しているのが確認された.手術は瘤の上下で血行を遮断し,瘤を縫縮した後に人工血管によるバイパス術とS状結腸の切除が行なわれた.術後患者は急性腎不全を併発し血液透析を要した.一時回復のきざしがみえたが,術後13日目に突然死した.剖検の承諾が得られず死亡原因は不明であつた.瘤の病理学的検索では,出血巣,浸潤細胞の増加にくわえ乾酪壊死やLanghans巨細胞がみられ,結核性大動脈瘤と診断された.
近年結核治療の進歩と相俊つて重症な結核患者は減少しつつある.しかし結核性大動脈瘤は稀ではあるが極めて予後不良な疾患であり,早期診断および早期治療が望まれる.

キーワード
結核性動脈瘤, 大量下血, 動脈瘤 S 状結腸穿孔

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