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日外会誌. 87(1): 90-98, 1986


原著

A-C バイパス術後運動負荷時の左室機能及び冠状静脈洞血流量の検討
-左前下行枝の血行再建の成否が及ぼす影響について-

大阪大学 医学部第1外科
*) 奈良医科大学 第3外科

榊原 哲夫 , 広瀬 一 , 中埜 粛 , 松田 暉 , 河内 寛治*) , 北村 惣一郎*) , 川島 康生

(昭和60年3月1日受付)

I.内容要旨
A-Cバイパス術後症例のうち,左前下行枝への血行再建術成功例20例(G-1)と,それが不成功に終つた7例(G-2)の術後安静時と運動負荷時において,左室機能を示す指標と冠状静脈洞血流量を測定し,正常対照例(G-C)と比較検討し,以下の結果を得た.
1.術前安静時の駆出率(EF),左室一分間仕事量(LVMW),左室拡張末期圧(LVEDP),冠状静脈洞血流量(CSF)は,G-1,G-2の間に差を認めなかつた.
2.術後安静時のEF,LVMW,LVEDP,CSFは,G-1,G-2,G-Cの相互間に差を認めなかつた.
3.術後運動負荷時のLVMWは,G-2(89±2.1kg・M/min)において,G-1(13.5±3.7kg・M/min),G-C(14.6±3.4kg・M/min)に比べ,有意に低値を示した(p<0.005,p<0.001)が,G-1,G-Cの間に差を認めなかつた.
4.術後運動負荷時のLVEDPは,G-2(32±6mmHg)において,G-1(17±7mmHg),G-C(13±3mmHg)に比べ,有意に高値を示したが,G-1とG-Cの間に差を認めなかつた.
5.術後運動負荷時のCSFは,G-2(160±64ml/min)において,G-1(357±79ml/min),G-C (290±113ml/min)に比べ,有意に低値を示したが,G-1,G-Cの間に差を認めなかつた.
以上の検討の結果,左前下行枝血行再建成功例においては,それが不成功に終つた症例に比べ,術後運動負荷時の左室機能は有意に良好であり,運動負荷による冠状静脈洞血流量の増加率は有意に高値を示すことが明らかとなつた.

キーワード
A-C バイパス術, 左室機能, 冠状静脈洞血流量

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