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日外会誌. 87(1): 49-60, 1986


原著

肝部分切除後の肝 DNA 合成におよぼす蛋白質・アミノ酸の影響

関西医科大学 外科学教室(指導:山本政勝教授)
大阪大学 蛋白質研究所機能制禦部門(指導:藤井節郎教授)

原田 直己

(昭和60年2月28日受付)

I.内容要旨
肝部分切除後の肝再生におよぼす蛋白質あるいはアミノ酸の影響について,再生肝細胞のDNA合成を中心に検討した.無蛋白食飼育下ラットの再生肝において,肝重量およびDNA量は術後48時間目に術直後の約2倍にまで回復した後,増加は認められなくなつた.この際DNA合成律速酵素のdCMP deaminase,Ribonucleotide reductase,Thymidine kinaseは肝切除直後から術後120時問目に至るまで活性誘導は著明に抑制された.しかしpolyamine量,m-RNA合成や蛋白合成には無蛋白食投与の影響は認めなかつたことから,無蛋白食飼育下の肝再生時にはDNA合成系酵素のみが特異的に抑制されることが明白となつた.しかもこの抑制は再生肝細胞がcell cycleのG1よりS期に移行する時点に加えられ細胞分裂が停止することが明らかとなつた.またラット肝再生時のDNA合成には投与カロリーよりもVal,Leu,Ile,Trp,Met,Phe,Thrの7種の必須アミノ酸が重要な役割を演じており,これらのアミノ酸のうち唯1種でも欠けるとDNA合成系酵素の誘導は認められなくなつた.これらのアミノ酸を肝切除直後から12時間のみ投与すると,普通食投与時とほぼ同じDNA合成系酵素活性誘導が得られたことから,肝切除時には術後きわめて早期よりのアミノ酸投与が必要であるとの結論を得た.

キーワード
肝部分切除, 蛋白質・アミノ酸欠乏, DNA 合成系酵素, 肝再生, アミノ酸輸液

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