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日外会誌. 86(12): 1640-1645, 1985


原著

心室中隔欠損兼大動脈弁閉鎖不全症手術の長期予後

札幌医科大学 胸部外科(主任:小松作蔵教授)

浅井 康文 , 安倍 十三夫 , 原田 英之 , 山田 修 , 杉木 健司 , 安喰 弘 , 小松 作蔵

(昭和60年1月9日受付)

I.内容要旨
過去22年間に心室中隔欠損兼大動脈弁閉鎖不全症(VSD+AR)51例に対して外科治療を行つてきたので,その遠隔予後について検討した.1960~1969年に行つた24例,1970~1979年に行つた18例,1980~1983年3月末までの9例の,計51例を対象とし,A群(VSD閉鎖のみ),B群(VSD閉鎖と大動脈弁形成),C群(VSD閉鎖と大動脈弁置換術)の3群にわけた.
Sellers II度以下のAR例には,VSD閉鎖のみを行い,直接経過観察可能であつた症例はVSD再パッチ閉鎖を含む14例で,術後平均11.6年経過し,全例拡張期圧が60mmHg以上で,NYHA重症度分類I度であつた.
Sellers lI度以上のAR例には大動脈弁形成術を行つたが,1969年以前の3例を晩期に心不全で,また最近の1例を感染性心内膜炎(IE)で失つた.組織断裂による再ARのため,術後1年目に再大動脈弁挙上術を施行した症例と,術後3年8ヵ月で再手術予定例がある.
自験の大動脈弁置換例は罹患年数が平均18年と長く,弁の肥厚,石灰化などの器質的変化の強い例であつた.初期には低心拍出量症候群(LOS)により失う例が多かつたが,最近の症例はprostheticvalve endocarditis(PVE)による再々弁置換(translocation法)の成功にみられるごとく,心筋保護法の導入によりその成績は一段と向上している.外来観察中の5例は平均11年を経過し,NYHA重症度分類I度2例,II度3例で,II度のうち2例に,それぞれ心房細動と下壁梗塞所見がみられた.
IEに起因するVSD+ARは4例で,1例を術後LOSで失つている.また術後IEは2例で,術後3ヵ月に1例を失つたが,他のPVE例はtranslocation法で救命している.
遠隔期における心電図上SV1+RV5は3群とも有意に左室負荷の軽減がみられ,心胸郭比ではA群で有意差をもつて(P<0.05),また脈圧は3群とも有意に低下した.

キーワード
心室中隔欠損症, 大動脈弁閉鎖不全症, 大動脈弁形成, 大動脈弁置換, 感染性心内膜炎


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