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日外会誌. 86(12): 1625-1631, 1985


原著

膵癌非切除症例の検討

名古屋大学 第1外科

長谷川 洋 , 二村 雄次 , 早川 直和 , 神谷 順一 , 前田 正司 , 岡本 勝司 , 塩野谷 恵彦

(昭和60年1月12日受付)

I.内容要旨
過去9年間に当科で経験した50例の膵癌非切除症例を検討した.腫瘍の主占拠部位は頭部36例,体尾部14例であつた.50例中35例(70%)には開腹術が施行され,非切除となつた理由は肝転移が60%と最も多かつた.
手術術式としては,予防的な消化管bypass術を胆道bypass術と同時に行うのが良いと考えられた.また,長期間良好なdrainageを得,術後の吐下血を防止するためには胆管空腸端側吻合(Rouxen-Y)+胃切除(Billroth-II法)が望ましいと考えられた.疼痛に対しては腹腔神経節切除が有効で施行例の87.5%に疼痛の寛解が得られ,開腹時に同時に施行すべきと考えられた.
手術例の平均生存期間は6.5ヵ月で,頭部では7.3ヵ月,体尾部3.8ヵ月であつた.PTCDのみの例は3.1ヵ月であつた.1年以上の生存例は6例(12%)であつたが,占拠部位,大きさなどには明らかな差は認められなかつた.肝転移,腹膜播種を有する膵切除症例との比較では,切除によつて予後の改善は得られずこの様な例の手術に際しては慎重な適応の検討が必要と思われた.
術後の補助療法としては40%の例に化学療法が施行された.この中では動注化学療法が最も有効で,生存期間の延長と長期生存例が認められた.

キーワード
膵癌, 神経節切除術, 動注化学療法

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