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日外会誌. 86(12): 1608-1617, 1985


原著

1,2-dimethylhydrazine 誘発ラット大腸腫瘍の発生と大腸組織における細胞蛋白質の変動に関する研究

*) 慶応義塾大学 医学部外科学教室
**) 慶応義塾大学 医化学教室

貞広 荘太郎*) , 小平 進*) , 高見 博*) , 高橋 哲也*) , 奥田 康一*) , 阿部 令彦*) , 石村 巽**)

(昭和60年2月28日受付)

I.内容要旨
Wistar系雄性ラットに1, 2-dimethylhydrazine(DMH)を120mg/kg・BW/week,合計5回皮下注射し,発生する大腸腫瘍を病理組織学的に検索すると同時に,大腸組織の細胞蛋白質の変動を2次元等電点-SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動法を用いて経時的に分析した.
本実験系においては,実験期間が長くなる程発生する大腸腫瘍の頻度・個数は増加し,実験期間20週で100%の大腸癌発生率がえられた.発生した腫瘍は,病理組織学的に高分化・中分化腺癌が大多数であり,低分化腺癌,粘液癌,印環細胞癌は少数であつた.発生部位は,major flexureおよびdistalcolon and rectumが大多数を占め,cecumおよびproximal colonは少なかつた.発生した腫瘍は,肉眼的に亜有茎性隆起(Isp)および無茎性隆起・表面隆起(Is・IIa)を呈するものが多く,有茎性隆起(Ip)は認められなかつた.また陥凹を伴なう隆起(IIa+IIc)が少数認められ,これらは全例粘膜下層以下に浸潤した癌であつた.
このような病理組織学的特徴を有する実験大腸癌モデルにおいて,大腸組織の細胞蛋白質を2次元電気泳動法を用いて経時的に分析した.DMH投与前には180個のスポットが分離されたが,DMH初回投与後,実験経過にしたがつて著しく増加したスポットが4個,新らたに出現したスポットが3個認められ,これらのスポットはラットの癌関連細胞蛋白質である可能性があると考えられた.また,実験経過にしたがつて消失したスポットが1個認められ,このスポットはラットの正常大腸に関連した細胞蛋白質である可能性があると考えられた.

キーワード
実験大腸癌, 1,2-dimethylhydrazine(DMH), 細胞蛋白質, 2次元電気泳動法, 癌関連細胞蛋白質

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