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日外会誌. 86(12): 1590-1595, 1985


原著

誘発電位を用いた消化吸収試験の試み
第2報 各種障害腸管の電気的膜抵抗-誘発電位ならびに吸収量の変化

東北大学 医学部第2外科
*) 東北大学 小児外科
**) 東北大学 小児科
***) 東北大学 第2病理

大河内 信弘 , 葛西 森夫 , 大井 龍司*) , 五十嵐 裕**) , 長沼 広***)

(昭和60年2月20日受付)

I.内容要旨
現在広く行なわれている消化吸収試験は大きく,RIを使用する方法,基質を負荷する方法に分けられる.しかし,いずれも放射線被爆,症状の増悪,操作手順が煩雑であるなどの問題がある.我々は小腸の誘発電位を利用した消化吸収試験を考案し,臨床に応用している.この誘発電位が正しく単位面積あたりの基質の取り込み量を反映するためには,測定する基質の輸送系がすべて能動輸送系によることと,小腸の電気的膜抵抗が成長過程やさまざまな病態下で,大きな変化を示さないことが必要である.我々は第1報においてモルモットを用い,i)発育過程において小腸の電気的膜抵抗は大きな変化を示さないこと.ii)糖,中性アミノ酸は授乳期から成熟期に至るまで能動輸送で吸収されると考えられること.iii)グリシルグリシンは特殊な能動輸送で吸収されるが,離乳期を過ぎれば誘発電位が取り込み量を反映すると考えられる,という3点を明らかにした.今回は,5-FU投与,虚血,長期絶食の条件下での小腸の組織像の変化及び誘発電位,電気的膜抵抗,取り込み量の変化をコントロールと比較検討した.組織所見では核の腫大,極性の変化,絨毛上皮細胞間の浮腫,毛細血管の拡張,上皮細胞の脱落などさまざまな所見が認められたが,電気的膜抵抗は大きな変化を示さず,誘発電位の変化が実際の取り込み量の変化を正しく反映していた.以上の事実より,小腸における誘発電位の測定は,消化吸収障害のみられる患者の消化吸収能を把握するのにすぐれた方法であると考えられる.

キーワード
消化吸収試験, 誘発電位, 小腸電気的膜抵抗, 障害腸管

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