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日外会誌. 86(10): 1397-1404, 1985


原著

胃癌における転移リンパ節の選択的描出法の検討
-胃粘膜下層ヘマトポルフィリン注入の試み-

大阪医科大学 一般・消化器外科

久保川 学 , 岡島 邦雄 , 山田 真一 , 磯崎 博司 , 水谷 均

(昭和59年9月13日受付)

I.内容要旨
腫瘍親和性のあるヘマトポルフィリンを術前,内視鏡下に胃癌周囲の胃粘膜下層へ注入し,術中, 転移リンパ節に取り込まれたヘマトポルフィリンの蛍光を,紫外線灯を用いて描出することにより効果的なリンパ節郭清の指標となり得ると考え検討を行つた.
0.25%ヘマトポルフィリンニ塩酸塩溶液を用い,胃癌手術48時間前に,内視鏡下に癌周囲の胃粘膜下層数ヵ所に計2ml注入し,術中,紫外線灯を用いて手術野および摘出リンパ節について,その蛍光の有無を肉眼的に観察するとともに組織学的転移の有無を検索し,さらにリンパ節内の蛍光発生部位およびリンパ節内のヘマトポルフィリン含量についても検討した.紫外線灯は波長365nmにピークを有するものを用い,ヘマトポルフィリン溶液の蛍光は波長625nm附近にピークを有す赤色光として認められた.
結果は,胃癌取扱い規約によるリンパ節部位別観察では蛍光陽性部位の78.9%,および蛍光陰性部位の8.6%に転移があり,また摘出リンパ節個々の検索では蛍光陽性群の56.9%,および蛍光陰性群の13.2%に転移を認め,いずれも有意に蛍光陽性群に転移が高率であつた.
また,リンパ節内のヘマトポルフィリン含量と蛍光の有無は相関するが,蛍光発生部位と転移部位は必ずしも一致しないという結果を得た.

キーワード
胃癌転移リンパ節, 腫瘍親和性, ヘマトポルフィリン, 蛍光, 経内視鏡的注入

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