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日外会誌. 86(10): 1388-1396, 1985


原著

BALB/Cマウスにおける脾摘および脾摘後自家移植に関する免疫学的検討

日本医科大学 第1外科(指導:代田明郎教授)

矢野 正和

(昭和59年12月1日受付)

I.内容要旨
脾臓摘出後の免疫学的変動に関する基礎的研究として,羊赤血球でマウスを感作し,これに対する液性抗体産生能におよぼす脾摘の影響,免疫グロブリンの変動を経時的に検討し,またT-cell mitogenであるPhytohemagglutinin-p, Concanavalin-Aを用い,マウス末梢リンパ球の増殖反応に及ぼす脾摘の影響を3H-thymidineの取り込みを指標にして検討した.さらに脾臓の自家移植が脾全摘に比べて抗体産生能,マウス末梢リンパ球のproliferationにいかなる影響を与えるかを合わせ検討した.
羊赤血球に対する抗体産生能は術後7週まで脾摘群は対照群に比して明らかに低い抗体価が持続したが,二次免疫反応では脾摘群でも対照群の抗体価に近い値を示し,二次応答の成立が見られた.免疫グロブリンは脾摘群でIgMの持続低下が認められたがIgGに関しては2群間に有意差が見られなかつた.
リンパ節リンパ球のmitogen刺激によるproliferationでは術後4週以降8週まで脾摘群は対照群に比して高い反応値を示し,この傾向は特にCon-Aによるresponseにおいて明確に認められた.
脾臓の大網への自家移植は,羊赤血球による血球凝集反応で移植群は日数を経るに従つて次第に高い抗体価をとるようになり,8週以降対照群との間にはほとんど差が見られなくなり,またmitogen刺激によるリンパ球のproliferationにおいては移植群が対照群と近似した反応を示し,自家移植脾が十分に液性免疫能,細胞性免疫能を維持している成績が得られ,その有用性が示唆された.

キーワード
脾摘術, 液性免疫, 細胞性免疫, 脾自家移植

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