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日外会誌. 86(10): 1379-1387, 1985


原著

がん患者尿中の免疫抑制酸性蛋白(IAP)の測定とその臨床的意義

国立仙台病院 外科〔指導:国立仙台病院名誉院長 菊地金男/東北大学医学部教授 石田名香雄〕

平山 隆

(昭和59年12月6日受付)

I.内容要旨
各種疾患患者における尿中の免疫抑制酸性蛋白(Immunosuppressive acidic protein:IAP)を受身赤血球凝集阻止反応法で定量し,その臨床的意義と血清中のIAPおよびPPD皮内反応との関連性について検討した.
1.正常人対照群(27例)の尿中IAP値は,0.02~1.30mg/day,平均値0.53±0.39mg/dayであったことから,正常人尿中のIAP値の上限を1.50mg/dayと定め,1.51mg/day以上を尿中IAP陽性とした.
2.非癌疾患(53例)の尿中IAP値は,胃,十二指腸潰瘍および胆石症では,平均値1.12±2.16mg/day,陽性率14%であつた.一方,消化器急性炎症では尿中IAP値の平均は15.5±26.0mg/day,陽性率44%と高率を示した.これらの疾患で,特に黄疸合併例では,尿中IAPは著しく高値を示し,平均 35.0±30.3mg/dayにまで達した.
3.各種癌患者(209例)の術前の尿中IAPの陽性率は40%であつたが,特に胆道・膵癌では陽性率100%,食道癌で83%と著しく高値を示し,ともに血中IAPの陽性率を上回つていた.また胃癌患者の尿中IAPの経時的測定で,治癒切除例では,術後3日目に一過性の上昇を示したが,症状の改善に伴い,全例が約10日以内に正常値へ低下した.また同時測定の血中IAP値は,ほぼ尿中IAP値と同様に上昇を示したが,正常値への低下に2~4週を要した.一方,非治癒切除および単開腹例では,術後 3日目に5~80mg/dayと著しく増加し,症状悪化例では尿中IAPの低下はみられず,高値を持続したまま死亡した.以上の症例でPPD反応の関連性をみると,症状の改善により尿中IAPが正常値に低下した場合は,PPD反応は陽転しており,症状悪化例では陰性のまま経過した.
以上,著者は尿中IAPの存在を明らかにし,これを臨床に応用した結果,患者の術前および術後の臨床経過のモニタリングに有用であることを明らかにした.

キーワード
尿中免疫抑制酸性蛋白(IAP), 癌患者のモニタリング


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