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日外会誌. 86(8): 966-971, 1985


原著

術前の画像診断で特徴的な所見のみられた特発性腸間膜静脈血栓症の1例

社会保険中央総合病院 外科
*) 社会保険中央総合病院 外科(現.東京大学第2外科)
**) 東京大学 第2外科

國土 典宏 , 三條 健昌*) , 中島 淳 , 出月 康夫**)

(昭和59年11月26日受付)

I.内容要旨
術前の超音波検査,X線CTなどの画像診断で興味のある所見が得られた特発性腸間膜静脈血栓症の1例を報告する.症例は53歳,男性.脳動静脈瘻による脳内血腫除去術後63日目より右上腹部の鈍痛が時々出現していた.7日後に強い腹痛となり,呕気,呕吐出現し,当科へ転科した.左上腹部の自発痛は強く,白血球数も19,300/mm3と上昇していたにもかかわらず,イレウスや腹膜炎を疑わせる所見に乏しかつた.腹部単純X線写真,超音波検査,X線CTでは左上腹部に壁が肥厚し硬化した腸管像が見られた.2日後,血性腹水が出現し開腹した.上部空腸約35cmが壊死に陥つており,病変部の腸間膜の静脈内に多数の血栓を認め,動脈は開存していたため腸間膜静脈血栓症と診断した.空腸を70cm切除し端々吻合を施行した.本例の凝固線溶系検査では明らかな異常は認められなかつた.
腸間膜静脈血栓症の超音波検査やX線CT所見に関する報告は少ない.本例のように肥厚した壊死腸管が同定されれば本疾患の診断に役立つと考えられる.

キーワード
腸間膜静脈血栓症, 超音波検査, CT


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