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日外会誌. 86(8): 933-940, 1985


原著

急性膵炎ショック時の副腎髄質機能に関する実験的研究

東北大学 第1外科(主任:佐藤寿雄教授)

武田 和憲 , 山内 英生 , 鈴木 寿彦 , 松野 正紀

(昭和59年11月30日受付)

I.内容要旨
雑種成犬を用い,急性膵炎ショック時の副腎髄質機能について,副腎adrenaline,noradrenalineの基礎分泌と内臓神経の電気刺激に対するadrenaline,noradrenaline分泌反応を指標として,脱血性ショック群と比較検討し,以下の成績を得た.(1)急性膵炎群をshock typeとnon-shock typeに分けて検討すると,両typeともadrenaline, noradrenalineの基礎分泌量の増加を認めたが, shock type では,血圧が著明に低下しているにもかかわらず,non-shock typeとの間に有意差を認めなかつた. (2)急性膵炎shock typeでは,対照群,急性膵炎non-shock typeに比較して,内臓神経の電気刺激に対するadrenaline,noradrenalineの分泌反応は早期より著明に低下していた.(3)急性膵炎shock typeでは,脱血性ショック群にくらべ,同じ程度の血圧低下で比較すると,adrenaline, noradrenaline の基礎分泌量のみならず,神経刺激に対する分泌反応量も著明に低下していた.(4)神経刺激に対する昇圧反応は,急性膵炎の両type,脱血性ショック群の間で有意差を認めず,内臓神経のviabilityは保たれていると考えられ,急性膵炎shock typeでの神経刺激に対するadrenaline,noradrenaline分泌反応の低下は神経障害に起因するものではないと考えられた.
以上より,ショックを伴う急性膵炎では,早期より膵炎による直接的な副腎髄質機能の障害が認められ,この副腎髄質機能障害は急性膵炎ショックの進展に関与しているものと考えられた.

キーワード
急性膵炎, 副腎髄質機能, catecholamine, 脱血性ショック

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