[書誌情報] [全文PDF] (7972KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 86(8): 923-932, 1985


原著

全摘膵における膵癌の膵内進展様式と膵管X線造影像に関する臨床病理学的研究

名古屋大学 医学部外科学第一講座〔指導:弥政洋太郎名誉教授 塩野谷恵彦教授〕

二村 雄次

(昭和59年11月26日受付)

I.内容要旨
膵癌の膵内進展様式を知るために,膵全摘を行つた膵管癌31例を対象として,切除膵を主膵管に直角方向の階段状切片を作製して,主に癌の膵内浸潤様式について病理組織学的検討を行つた.一方,新鮮切除膵の膵管X線造影を行い,膵管X線像と病理組織所見とを対比検討した.
膵癌の膵内浸潤様式を,主に癌の浸潤の先進部の組織像により大きく4型に分類した.I型(ビマン浸潤型)は小葉間の結合織内をビマン性に浸潤する小葉間ビマン型,Ia型(14例)と,小葉間の神経線維に沿つて浸潤する小葉間神経周囲型,Ib型(6例)とに細分類された.膵管に沿つて浸潤するII型のうちでも膵管上皮内を連続性に浸潤するものを膵管上皮内連続型,Ila型(4例)とし,主膵管周囲をビマン性に浸潤するものを主膵管周囲型,IIb型(2例)とした.限局圧排性に増殖し,髄様構造を呈するものを限局圧排型,III型(3例)とした.主膵管内に多発性の隆起性病変を認めるものを主膵管内多発型,IV型(1例)とした.この他,同一病変内に2種類の異なつた浸潤様式を認める混合型と膵内の異つた部位に異つた浸潤様式を示す腫瘍を認めるものを混在型とした.
膵管X線像の特徴は,I型は主膵管の著明な狭窄とそれより尾側膵管の捻珠状拡張であり,II型は尾側膵管の拡張がI型よりも高度で,壁不整と分枝の造影不良が特徴的である.III型は膵管狭窄よりも拡張の方が目立ち,囊胞拡張を示す場合もある.IV型は狭窄のない拡張が特徴であり,膵管内に透亮像が認められる.
乳頭状増殖をする癌腫は膵内を広範に浸潤する性格を示し,著明な主膵管の拡張と膵管分枝の造影不良が膵管X線像の特徴であり,このような症例には膵全摘術を行うべきであると思われた.

キーワード
膵癌, 膵内浸潤様式, 膵管X線像, 膵全摘術


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。