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日外会誌. 86(8): 893-900, 1985


原著

ラットを用いた腹膜炎下のエネルギ―代謝に関する実験的研究

三重大学 医学部第2外科学教室(主任:鈴木宏志教授)

日下 典子

(昭和59年11月16日受付)

I.内容要旨
腹膜炎における基本エネルギー基質としての脂肪酸とグルコースの代謝を知る目的で,ラットを用いて対照ブドウ糖群(n=12),盲腸結紮により作成した腹膜炎下ブドウ糖群(n=10),腹膜炎下脂肪群 (n=10)の3種類の実験モデルを作成し,(1-14C)リノール酸あるいは(U-14C)グルコースを静注して呼気14CO2累積回収率,肝臓中の総脂質・脂質分画・グリコーゲン,脂肪組織の総脂質,骨格筋のグリコーゲン,および血中FFA値を測定した.その結果,1)腹膜炎下で脂肪酸燃焼は亢進するがグルコース燃焼は抑制傾向にあつた.2)腹膜炎下で血中脂肪酸濃度が高くなると脂肪酸燃焼も亢進していた.3)腹膜炎存在下の脂肪組織ではグルコースは脂質に転換され,脂肪酸からは脂質転換が減少していた.4)肝臓では,グルコースは脂質に転換され,脂肪酸からはトリグリセライド転換が増加しているが,グリコーゲン合成は低下していた.5)骨格筋中のグリコーゲン量は3群間に差はみとめられなかつた.などの知見が得られた.

キーワード
腹膜炎, 脂肪代謝, 糖質代謝, 14C-グルコース, 14C-脂肪酸

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