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日外会誌. 86(7): 868-876, 1985


原著

異所性消化管組織による胆嚢の腫瘤性病変
-本邦及び欧米報告例の文献的考察-

福島県立医科大学 第2外科

石井 芳正 , 大森 勝寿 , 鈴木 正人 , 星 竹敏 , 渡辺 岩雄 , 遠藤 辰一郎

(昭和59年10月6日受付)

I.内容要旨
胆嚢に発生する異所性組織の報告はきわめて少ない.我々は胆嚢壁内に腫瘤性病変を呈した異所性胃組織の1例を経験したので,本邦及び欧米報告例から本症の臨床像を分析し報告する.
症例は58歳の女性で,右上腹部痛発作を主訴とし,USにて胆石症及び胆嚢腫瘤性病変の診断を得,胆嚢摘除術を施行した.病変は,底部漿膜下に腫瘤を認めるが結石は存在しなかつた.組織像より胃幽門腺組織と同定された.
胆嚢壁内異所性組織のうち胃組織,膵組織の報告例の集計結果は次のようであつた.
1)報告例数はこれまでに胃組織が29例,膵組織は27例にすぎない.
2)年齢は若年者に多く胃組織で平均31.9歳,膵組織では42.0歳であつた.性差はみられなかつた.
3)発生部位は,両者とも胆嚢管あるいは頚部に多く,約半数を占めていた.
4)壁内占居部位は,胃組織では粘膜側,膵組織では漿膜側に多い傾向があつた.
5)胆石症の合併は胃組織で31.0%に,膵組織で51.9%に認められており,胆嚢炎の合併はそれぞれ65.5%,48.1%であつた.
6)成因は発達異常説,別形成説,化生説が考えられているが,組織像で充分に分化成熟した完全型もあるが,そうでない不完全型もあり,同一組織でも成因は症例により異つている可能性がある.

キーワード
胆嚢良性腫瘍, 胆嚢異所性組織


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