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日外会誌. 86(6): 680-685, 1985


原著

胃癌における絨毛性ゴナドトロピン様物質測定の臨床的意義

金沢大学 第2外科
*) 福井医大 第1外科

米村 豊 , 沢 敏治 , 橋本 哲夫 , 嶋 裕一 , 宮崎 逸夫 , 三輪 晃一*)

(昭和59年9月3日受付)

I.内容要旨
胃癌患者の血中hCG,CEAを測定し以下の結論を得た.血中hCG陽性率は全体で8.6%,CEA陽性率は全体で18%とCEAの陽性率が高かつた.しかしhCGのみ陽性が全体で7%みられたことからhCG,CEAの同時測定により胃癌患者の再発・予後をより正確に診断できる.また血中hCG高値例は全例Stage 4でリンパ節転移高度,低分化型のBorrmann 4型胃癌が多かつた.一方,CEA陽性例は82%がStage 4でBorrmann 2, 3, 4型胃癌が多いが組織型に特徴はなかつた.これら腫瘍マーカー陽性例の予後は極めて不良でhCG陽性例は全例1年以内に,CEA陽性例は30例中27例が4年以内に再発死亡した.hCG陽性例のα,β subunitsを検討したところ各々の症例がまつたく異つたsubunit合成分泌をしていることが判明した.すなわちこれら腫瘍が産生するhCGは生物学的活性が低く内分泌症状を発現しがたいものと推察された.hCGの細胞内局在は低分化型又は中分化型癌細胞の胞体内に微細顆粒状にみとめられた.以上より血中hCG,CEA測定は胃病の病期,再発・予後を知るうえで有用な腫瘍マーカーと考えられた.

キーワード
hCG産生胃癌, CEA 産生胃癌, 腫瘍マーカー, Borrmann 4型胃癌, hCG subunit

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