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日外会誌. 86(6): 669-679, 1985


原著

胃癌の腹膜転移に関する病理組織学的研究

鳥取大学 医学部外科学第1教室(主任:古賀成昌教授)

岡本 恒之

(昭和59年8月29日受付)

I.内容要旨
胃癌の腹膜転移巣が経時的に形態変化を示すか否かを明らかにする目的で,腹膜転移を伴なう胃癌症例117例について,転移巣の肉眼的ならびに病理組織学的検索をおこない,以下の結果を得た.
腹膜転移巣の肉眼形態別頻度は,小結節(撒布)型75%,びまん浸潤型10%,結節(散在)型7%,浸潤硬化型6%,卵巣型2%の順であつたが,その確認時期別に検討すると,初回開腹例では小結節(撒布)型あるいは結節(散在)型が94%であつたが,再発・再燃例では74%に減少し,剖検例ではびまん浸潤型あるいは浸潤硬化型が大部分を占めた.同一症例で2回開腹術がおこなわれた12例についてみると,転移巣の肉眼形態は初回開腹例あるいは再発例では結節型優位であり,再燃例あるいは剖検例では浸潤型優位のものが多くみられた.このことより腹膜転移巣の肉眼形態は,癌の進展に伴なつて経時的に変化することが示唆された.これを組織学的に検討すると,低分化腺癌,ことにpor(scirrh)あるいはpor(intermed)が腹膜に転移した場合には,その転移巣ははじめは結節型を呈し,その後しだいに癌細胞の浸潤増殖に伴ない浸潤型へ移行するものと考えられた.一方,高分化腺癌あるいはpor(med)が転移した場合には,これらは腹膜において結節性増殖を示すが,同時に原発巣従組織型として認められるより低分化癌の腹膜転移があり,これらが優位に浸潤増殖し,腹膜転移の肉眼形態に経時的変化が表われるものと考えられた.また,腹膜転移を伴なう胃癌では,腹水を認めることが多いが,これらは腹膜転移巣における漿膜下結合織の増生の程度と相関してみられた.

キーワード
胃癌, 腹膜転移巣, 増殖形態, 腹水


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