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日外会誌. 86(5): 555-565, 1985


原著

肝動脈塞栓療法後肝切除施行肝細胞癌症例の臨床的ならびに病理組織学的研究

大阪市立大学 第2外科

広橋 一裕 , 酒井 克治 , 木下 博明 , 井川 澄人 , 長田 栄一 , 松岡 修二 , 久保 正二

(昭和59年7月26日受付)

I.内容要旨
肝癌の治療成績向上のため肝動脈塞栓療法(以下TAE)後に肝切除を施行した肝細胞癌26例を対象として,TAE後の臨床像と肝動脈造影所見,TAEの抗腫瘍効果とその背景因子さらには手術成績について検討した.
TAEによる重篤な合併症はなく,肝機能の悪化も一過性であり,TAE後肝切除までの期間は1カ月前後が適当である.TAE後の肝動脈造影は肝および腫瘍への血行動態の変化や肝内転移の診断に有用であり,肝切除の最終的な適応決定に必要であつた.
主腫瘍に対するTAEの効果は動脈血行支配に大きく左右された.すなわち直径5cm未満で被膜を有し,単一動脈の支配をうけた腫瘍の壊死率が高いが,直径5cm以上の肝癌では複数の血行支配をうけることが多く,辺縁部より腫瘍の再増殖が生じやすい.しかし,大型肝癌例は腫瘍の縮小により臨床症状が改善するとともに手術が安全に行われた.また,肝動脈造影上検出可能な直径0.5cm以上の肝内転移巣に対してTAEは有効であつたが,直径0.5cm未満の肝内転移巣や被膜および被膜外浸潤部には効果が少なかつた.さらに門脈,肝静脈,胆管内腫瘍栓に対するTAEの効果がほとんど認められなかつた.

キーワード
肝細胞癌, 肝動脈塞栓療法, 肝切除

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