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日外会誌. 86(5): 514-526, 1985


原著

がん患者における免疫抑制機序に関する臨床的研究

広島大学原爆放射能医学研究所 臨床第2(外科)部門(指導:服部孝雄教授)

棚田 稔

(昭和59年8月22日受付)

I.内容要旨
がん患者血清によるサプレッサー細胞活性の誘導について検討した.至適誘導条件は,添加がん患者血清濃度40%,培養時間24時間であつた.誘導されるサプレッサー細胞は,サプレッサーT細胞であり,Tγ細胞,Tnonγ細胞分画どちらも,がん患者血清によりサプレッサー細胞活性をもつてくるものが存在した.また単球の存在により,誘導されるサプレッサー細胞活性が上昇した.補体系は,この活性誘導において何ら影響を及ぼさなかつた.
生体内で既に活性化されているspontaneousサプレッサー細胞活性との関係において,両者間には有意の相関関係が認められ,実際に生体内で,血清によりサプレッサー細胞活性が誘導されていることが示唆された.
また脾静脈血清と,末梢血血清との比較において,脾静脈血清により高いサプレッサー細胞活性誘導能が認められた.
臨床的検討において,大腸がん,肝・胆・膵がん,食道がん,乳がん,胃がん患者血清は良性疾患患者血清に比べ有意に高いサプレッサー細胞活性誘導能が認められ,胃がんにおいては,stage,腫瘍の大きさ,肝転移,組織型,静脈侵襲,乳がんにおいては,stage,腫瘍の大きさの各因子との間に相関が認められた.また手術前後の胃がん患者血清のサプレッサー細胞活性誘導能は,治癒切除群において有意の差でもつて低下した.
また血漿交換療法は,この活性を低下させるのに充分効果のある治療方法であつた.
以上,がん患者における免疫能の低下の機序解明の目的で,がん患者血清によるサプレッサー細胞活性誘導について検討した.

キーワード
血清誘導サプレッサー細胞活性, Tγ細胞, Tnonγ細胞, spontaneousサプレッサー細胞活性

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