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日外会誌. 86(4): 482-488, 1985


原著

心筋手術創瘢痕の病理組織学的研究

日本医科大学 胸部外科
*) 日本医科大学 第1病理

田村 浩一 , 小泉 潔 , 山手 昇 , 庄司 佑 , 杉崎 祐一*) , 山中 宣昭*) , 矢島 権八*)

(昭和59年6月20日受付)

I.内容要旨
弁置換術後の剖検例のうち,術後生存期間が28時間から5年にわたる14例(男7例,女7例,平均48.6歳)を対象に,大動脈,心房自由壁,心房中隔,左室の各切開創部の瘢痕形成過程について,病理組織学的に検討を加えた.
1.大動脈および心房自由壁では,術後18日例で内膜の新生が始まつており,1ヵ月~1.5ヵ月で,新生内膜の肥厚と外膜側膠原線維の増生により癒合が完成していた.
2.左室vent挿入部では,術後18日頃肉芽形成がみられ,1ヵ月でほぼ幅1cm程度の膠原線維性瘢痕が認められた.心筋細胞間結合組織の増生がこの瘢痕形成に関与することが,一般組織の瘢痕治癒過程との違いであつた.
3.心房中隔では,術後18日頃からみられる新生内膜がしだいに肥厚し,組織癒合の主体をなしており,肉芽形成はほとんど認められなかつた.縫合時,内側に折れこんだ縫着部内膜は,術後7ヵ月でも癒着はみられず,スリット状の死腔が残存しており,新生内膜が肥厚を示す術後1~2ヵ月までは,縫合部は脆弱な状態であることを示していた.
4.左室vent挿入部瘢痕は,術後1ヵ月未満で収縮率平均50%,その後で平均30%に収縮していたが,aneurysmaの形成は1例もみられなかつた.一方心房中隔切開部では,術後2ヵ月までで平均80%,その後は新生内膜が肥厚し,45%程度の収縮にとどまつていた.

キーワード
心筋創の治癒, 心筋切開後の瘢痕

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