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日外会誌. 86(4): 470-481, 1985


原著

膵再生の実験的研究
-犬膵広範切除後残存膵の形態的再生と機能的回復-

三重大学 医学部第1外科学教室(指導:水本龍二教授)

矢野 隆嗣

(昭和59年7月2日受付)

I.内容要旨
雑種成犬を用い,膵広範切除後の残存膵の再生につき形態的ならびに機能的に検索して以下の成績を得た.まず形態的再生を検索するために残存膵の計測を行い,重回帰分析を応用して手術時残存膵重量を正確に推定して切除率,再生率を算出した.膵広範切除後早期には残存膵腺房細胞の分裂がおこり,次いでこれが肥大して残存膵重量の増加をきたす.特に74%以上の膵切除後,糖尿病を発現しなかつたものの重量増加が最も著明であり,術後12週以降で平均45.3%の再生率を示した.またその再生率は切除率とよく相関し,更に残存膵の内外分泌機能ともよく相関した.糖尿病発現例では,糖尿病非発現例に比し再生率は有意に低値を示し,膵外分泌機能の回復も不良であつた.
結局,膵切除率が92%以下であれば残存膵の外分泌機能は術後一時低下するものの,12週以降には正常域にまで回復し,膵外分泌機能の面からみた膵切除限界は92%と考えられた.一方,糖尿病の発生を基準とした膵切除限界は74%と考えられた.

キーワード
膵広範切除, 膵再生, 糖尿病, PS 試験, 過分泌


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