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日外会誌. 86(3): 319-324, 1985


原著

大動脈弓分枝動脈の動脈硬化症

愛知県立尾張病院 外科

池澤 輝男 , 仲田 幸文 , 中神 一人 , 前田 正司 , 長谷川 洋

(昭和59年5月1日受付)

I.内容要旨
1980年9月から1983年4月までの2年8ヵ月間に100例の動脈硬化症を経験したが,うち43例(43.0%)はTIA,RIND等の症状もしくは頚部鎖骨上窩に血管雑音を有する症例であつた.この43例について再検討したところ,年齢は46歳から81歳で平均66.3±9.4歳で,男女比は1.9:1であり男性の高齢者に好発している.43例中33例に血管撮影を施行したが,所見のなかつた1例を除く32例の病変の部位別頻度は,頚動脈32,椎骨動脈18,鎖骨下動脈12であり左側32,右側30で左右差はなかつた.また形態別頻度は,狭窄42,閉塞13で閉塞性動脈硬化症が大部分を占め,その他瘤様拡張7がみられた.また病変が1ヵ所のみの単発例は7例で残りの25例は2ヵ所以上にあり,さらに他領域に及ぶ多発型も8例(242%)と多くみられた.合併症には糖尿病,脳血管障害,悪性腫瘍,活動期肺結核が各々11.6%,心疾患9.3%がみられた.Risk Factorとして収縮期圧150mmHg以上の高血圧が51.2%,CTR 50%以上が56.8%,心電図の虚血性変化50.0%,BUN 20.0mg/dl以上43.9%とかなりの高頻度にみられた.また血清脂質のT-C,TG,β-Lpについてみると14.6~25.9%が高値を示し,HDL-Cは22.2%が低値を示した.43例中12例に外科的治療を行つた.手術方法は9例にThromboendarterectomy(TEA)もしくは,TEA+vein patchを行い,その他固定1例,Aneurysmorrhaphy 1例,Arteriotomy 1例を施行した.術死,遠隔死もなく,ほとんどに症状の改善もしくは軽快をみた.保存的療法の31例では3例が肺癌,心不全で死亡した.TIA,RINDに対する手術適応は確立されているが無症状例に対する予防的手術の是非はまだ確立されていない.しかしながら一旦strokeが発生してしまつたら手遅れとなつてしまうため,無症状例に対する手術適応が早急に確立されることが望まれる.

キーワード
大動脈弓分枝動脈, 動脈硬化症, 血管雑音, TIA, Stroke

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