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日外会誌. 86(3): 290-297, 1985


原著

誘発電位を用いた消化吸収試験の試み:第 1 報 発育過程における膜抵抗と能動輸送系の変化

1) 東北大学 医学部第2外科
2) 東北大学 医学部小児外科
3) 東北大学 医学部小児科

大河内 信弘1) , 葛西 森夫1) , 大井 龍司2) , 五十嵐 裕3)

(昭和59年4月4日受付)

I.内容要旨
現在小腸の糖,アミノ酸及びスモールペプタイドの消化吸収能を正しく把握する簡便な方法はみあたらない.我々は以前より糖,アミノ酸が小腸において吸収される際生じる誘発電位を利用した消化吸収試験の臨床応用を試みている.試発電位は小腸の膜抵抗と基質の吸収量の積として表わされる.今回我々はモルモットを用いて,誘発電位を規定する小腸の膜抵抗ならびに糖,アミノ酸,スモールペプタイドの吸収系の発育過程における変化を検討し以下に示す結果を得た.1)小腸の膜抵抗は発育過程を通じて大きな変化はみられない.2)糖は単糖,二糖類ともに授乳期から成熟期まで実際のuptakeと電気的に求めた輸送量がよく一致しており,生下時より能動輸送によつて吸収されると考えられる.3)グリシンのuptakeは授乳期から成熟期まで大きな変化はみられない.グリシンも糖と同様に,授乳期から成熟期に至るまで能動輸送によつて吸収されると考えられる.4)グリシルグリシンのuptakeは授乳児に高く,その後除々に低下してくる.電気的に求めた輸送量は逆に授乳期に低く,離乳期を過ぎるとuptakeに近い値を示した.グリシルグリシンは授乳児にはNaイオンとカップリングしないで吸収されるものが全体の約3分の2を占めると考えられる.
以上の結果より糖,中性アミノ酸は生下時から,小腸誘発電位が実際の吸収量をよくあらわすと考えられる.またグリシルグリシンに関しては離乳終了期以降であれば,小腸誘発電位の値から吸収量を推測できると考えられる.

キーワード
消化吸収試験, 誘発電位, 能動輸送, 小腸膜抵抗, 発育

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