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日外会誌. 86(3): 240-250, 1985


原著

下垂体・副腎皮質の手術侵襲に対する反応

名古屋大学 第2外科教室

舟橋 啓臣 , 水野 茂

(昭和59年3月19日受付)

I.内容要旨
手術侵襲に対する下垂体・副腎皮質の反応を,血中および尿中ステロイドホルモンなどを術前から術後1週間まで経時的に測定することにより検討した.
血中ステロイドホルモンはほとんどがACTHと相関した術後変動で術直後に頂値を示した,血中ステロイドホルモンを鉱質系,糖質系,性ホルモン系などに分けると,糖質系のcortisol(F)は前段階の代謝産物である11-deoxycortisolと同様に術直後に強く上昇して侵襲に対処していた,性ホルモン系ではtestosterone(T)は上昇したFが直接精腺に抑制的に働いて,前段階の2種のホルモンが相当上昇したのに逆に大きく減少した.鉱質系のaidosterone(Ald)は前段階の2種のホルモンが強く反応したのに比しほとんど上昇しなかつた.
電解質の出納をみると術直後はNaが体内に貯留しており,Aldの上昇抑制は手術侵襲による体内へのNa貯留が要因と考えられた,同時に側定したレニン活性の変動をAldと比較するとrenin angiotensin aldosterone 系から逸脱したものであり,この解離現象も体内にNaが貯留したことを示唆していた.
一方,非侵襲時のin vivo,invitroにおける副腎のACTHに対する反応を侵襲時の術直後と比較した,反応の程度はおおよそin vitro,in vivo,手術侵襲の順に強くなつた.特にin vivoでは侵襲時に比し,大切なFは絶対量が約1/2と小さく,Tの低下も小さかつたが逆にAldの上昇は大きかつた.
すなわち,一般に手術侵襲の際はステロイドホルモンの生体におよぼす影響が問題にされるが,逆に侵襲によつて生じたNa,水の代謝異常などが副腎そのものの反応を修飾しているのであり,術後のステロイドホルモンの変動はむしろ二次的なものと考えられた.

キーワード
手術侵襲, 下垂体・副腎皮質の反応, 血中ステロイドホルモン, 副腎遊離細胞のホルモン産生能, renin angiotensin aldosterone syatem

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